子どもの教育費1人1000万円は必ずしも必要ではない
子どもを育てるのにはお金が掛かることは、多くの子育て世代が実感していることでしょう。
よく聞くのは、教育費が子ども1人1,000万円必要というもの。
この説が本当かどうかを調べてみた結果、1人1,000万円の教育費は必ずしも必要ではないと分かりました。
その理由を説明していきます。
子どもの教育費に関するデータ
この子どもの教育費1人あたり1,000万円必要というのは、文部科学省が出している「子供の学習費調査」が元になっています。
参照:文部科学省HP
これは「平成30年度子供の学習費調査」からの抜粋です。
ここには幼稚園(3年間)から高校までの1年間の平均の教育費が、公立と私立で分けて載っています。
この表で計算した入学(入園)~卒業(卒園)までの費用は次の通りです。
公立幼稚園 670,941円
私立幼稚園 1,583,748円
公立小学校 1,927,686円
私立小学校 9,592,146円
公立中学校 1,465,191円
私立中学校 4,219,299円
公立高校 1,372,140円
私立高校 2,909,733円
幼稚園から高校まですべて公立だと5,435,958円、すべて私立だと18,304,926円です。
大学の費用に関しては、日本学生支援機構が出している「平成28年度学生生活調査」を見てみましょう。
私立大学は文系と理系に分けず一括りになっていますが、実際は文系はもう少し安く、理系は高くなります。
幼稚園から大学まですべて公立だと8,005,958円、すべて私立だと23,748,526円で約3倍の差があります。
すべて公立なら1,000万円も掛かりませんが、すべて私立だと2,000万円あっても足りないということになります。
モデルケース
公立と私立の違いでの差が大きすぎるので、今回は一番多いパターンで計算してみたいと思います。
下の表は文部科学省が出しているデータです。
参照:文部科学省HP
少し古いデータにはなりますが、教育機関の私立の割合が出ています。
私立小学校に通うのはわずか1.1%、私立中学校に通うのは7.2%で、小中はほとんどが公立校に通っていることが分かります。
高校も7割は公立校に通っています。
一方で幼稚園と大学は、大半が私立という結果です。
ですので、今回は幼稚園と大学のみ私立、小学校から高校までは公立に通ったパターンで考えてみます。
このパターンで先ほどのデータに当てはめてみると、
私立幼稚園 1,583,748円
公立小学校 1,927,686円
公立中学校 1,465,191円
公立高校 1,372,140円
私立大学 5,443,600円
合計で11,792,365円、約1,180万円です。
やっぱり1,000万円必要じゃないか!と思うかもしれませんが、そうではありません。
その理由は3つあります。
幼児教育の無償化
令和元年10月より、幼児教育・保育の無償化が始まりました。
これは3~5歳児クラスの幼稚園(要認定)の利用料が月額25,700円を上限に無料となる制度です。
この制度は高校無償化とは異なり、所得制限がありません。
バス代や給食費は対象外なので完全に無料になるわけではありませんが、ざっくり計算すると3年間で90万円の負担軽減になります。
ちなみに高校無償化に関しては2010年から始まっており、「平成30年度子供の学習費調査」にすでに反映されていると思われます。
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学校外活動費
先ほどの「平成30年度子供の学習費調査」をもう一度見てみましょう。
参照:文部科学省HP
学習費総額の中で大きな割合を占めているものは学校外活動費です。
小学校と中学校では6割以上を占めています。
幼稚園から高校まで(幼稚園のみ私立)の学習費総額は約635万円ですが、そのうち学校外活動費は約320万円と半分以上を占めています。
この学校外活動費は何かと言うと、主に塾や習い事の費用です。
塾や習い事はもちろん教育費でしょうが、義務でも何でもありません。
しかもこの数値は平均値です。
一部の人がゴルフやフィギュアスケートでプロを目指すような年間数百万もする超高額な習い事をしていれば、平均額が大きく押し上げられることも考えられます。
実際、我が家の小学生の子たちも2つ3つの習い事をしていますし、中学生の子たちも小学生時代に同じようにしていましたが、年間で見ると1人平均10万円ほどで上の表の半額程度です。
子どもの教育費が1,000万円必要というのは、保険業界でよく耳にします。
不安をあおって自分たちの保険を売り込みたいのでしょうが、データを自分たちの都合のいいように使っていてフェアではないと思います。
このデータから分かるのは、幼稚園から高校までの子どもの教育に掛けている平均額は約635万円だけど、習い事などを除いた欠かすことのできない教育費は約315万円ということです。
大学費用
最後の根拠は大学費用です。
日本では多くの人が大学の費用を親が出すべきだと考えているようですが、そうでなければいけないのでしょうか。
わたし自身も、大学の費用は親に出してもらいました。
それはとてもありがたかったですし、感謝しています。
でもそれが当然のことだとは思いません。
わたしの友人には、働きながら夜間の大学に通っていた人や、新聞奨学生をして大学生活を送っていた人もいます。
彼らの家が貧しくてそうしていた訳ではなく、それが彼らの家庭の教育方針だったようです。
わたしは親から全額出してもらってのうのうと過ごしていました。
一方、彼らは学生時代に苦労をしていたように思います。
ただそれだけの苦労をしてまで大学に通うのですから、学びたい意欲は人一倍あったと感じました。
大学はなんとなく行く場所ではなく、本気で学びたい人が行くべき場所だと思います。
行きたくないなら行かなきゃいいし、一旦社会に出てから大学に行ったっていいと思います。
そして本気で学びたいのなら、自分で大学費用を工面するのも選択肢の1つではないでしょうか。
本当に必要な教育費はいくら?
この3つの理由を元に、本当に必要な教育費を計算してみましょう。
・幼稚園から高校まで(幼稚園のみ私立)の学習費総額が約635万円
・幼児教育・保育の無償化で約90万円の負担減
・そのうち学校外活動費は約320万円
・大学費用は必ずしも親が払う必要はない
635万円-90万円-320万円=225万円
高校卒業までかかる本当に必要な教育費は子ども1人あたり225万円です。
18年は216ヶ月なので、1か月あたり1万円ちょっとです。
さらに日本では、所得制限はあるものの大半の人が対象になっている児童手当があります。
この児童手当で中学卒業までに受け取る総支給額は、子ども1人当たり約200万円です。
これを教育費に充てるなら、高校卒業までに必要な最低限の教育費はほとんど負担がないことになります。
習い事をさせるな、大学の費用は子どもに出させろ、と言っているわけではありません。
ただ、これらは絶対になくてはならないものではないと思います。
今回このテーマを取り上げた理由の一つは、1,000万円の教育費なんて無理だと思って子どもを断念する人や苦しむ人が減ってほしいからです。
中には、高い教育費を理由に中絶を選んでしまう人もいます。
日本人はわたしを含めて、周りに合わせがちな人が多いようです。
合わせがちというよりも、同じでなきゃといけないと思っていると言った方がいいかもしれません。
子どもに対しても、周りの子と同じようにしてあげなきゃかわいそうだと思う人もたくさんいますが、決してそんなことはありません。
子どもへの愛情は、掛けた費用で決まるわけではありません。
教育費で1,000万円程度掛けている人は多いですが、必ずしもそれだけの額が必要ではないことを一人でも多くの人に理解してもらえたらうれしいです。
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